一穂社の文庫本・オンデマンド
今回の出版者列伝は、前回の萬洲さんから紹介していただいた、一穂社(いっすいしゃ)の古谷社長にお願いしました。
――古谷さん、新しいオンデマンド印刷・製本システムを作られたそうですね。印刷から製本まで内製化してしまうというシステムだと聞いています。
そうですね。
印刷から製本まで社内で仕上げ、独自の料金体系を構築しないとオンデマンドは対応出来ません。
このシステムなら、かなりの低コストで、流れ作業的に書籍を印刷・製本してくれます。
絶版本の復刊シリーズを軌道に乗せるために、まだ残っているのは、版元(出版社)との交渉です。うちで考えているのは、旧字本を新字本で出す文庫本の復刊ですが。
オンデマンド本は、本を作ってくれと要求する側(版元)に、オンデマンドの技術革新をどこまで説明できるか、そこが交渉上のポイントになります。
現在の日本の印刷・製本技術は最高水準であり、また長い歴史も持っております。
版元は、大量生産されるその最高レベルの新刊書籍と同じレベルを、オンデマンド本に要求してきます。
とくに隔たりが大きいのは、カラーのカバーです。
もちろん技術的には問題ないのですが、問題はコストです。どんなに安く「書籍自体」を作っても、カバーが高くてはね。
発想の転換さえすれば、話は簡単なのですがね。どうも原本通りという要求が多くて。
弊社では単に原本をスキャンするだけではなく、旧字体の本を新字体に変換して、新組にする技術を持っています。
但し、日本語の文字組版は、世界一難しい組版ですから、全てを自動化することはできません。読み込んだ原本データから誤字を除く作業、つまり校正の課題が残ります。
現在、日本の出版界の常識では、誤字は1字/1万字。1冊20万字程度とすると、1冊のなかに誤字は20字程度あることになります。
絶版本の復刊の場合、OCRで読み込んだ後、1字/1万字レベルに近づけていくわけです。が、今の所、その10分の1の1千字に1~2字程度がやっとのレベルです。
旧字を新字に変換する部分は、100%OK。そのシステムは作りました。あとはOCRの読み込みの部分なのです。
1千字に1字程度の誤読率OCR装置は、現在既にありますので、状態のいい本のスキャンはうまくいきますね。
テキストデータに変換するのは、校正をしないといけませんので少し手間がかかりますが、検索ができること等を考えると、将来的に見れば大きな資産になるでしょう。
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